唐九郎トーク:ロマンティスト 唐九郎

昭和8年唐九郎はそれまでの古窯調査の成果を踏まえ『黄瀬戸』(宝雲舎)を処女出版します。この本についてはさまざまなエピソードがあるのですが、それらはまた別の機会に譲ることにして、今回はいままで誰も注目してこなかった巻頭の詩を紹介させていただきます。文学青年であった唐九郎のロマンティックな心情がここに吐露されているように思われます。

里のせま苦しい集団生活と屋内の作業とに

うみつかれやすい私の心は
山へ広い天地を求めて逃れやうとする

私は毎日のやうに

里に遠い山の古い窯跡を尋ね

ある時は

すえつくる土と釉を求めて名も知らぬ里にも行き

幾たびか夜を山に明かしたこともある

華やかな社交と
世を渡ることの上手な里の工人達は
私の行ひを狂人だと嘲って
誰も仲間にしやうとはしない

ひとりぼっちで淋しくなると
つひ山の魅力にひつぱられ
山へ山へと分け入って
昔の山の窯跡で
まことの道を聞いて見る

唐九郎

出典:加藤唐九郎著『黄瀬戸』(宝雲舎) 昭和8年発行