「やきもの一問一答」:第二回 「磁器のこと」

◎磁器は石を焼いたものとのことですが、もう少し詳しく 教えて下さい。

石を粉砕して粉末にして、それを形づくって焼いたもの が磁器。石といっても長石類なんだが、中国ではカオリン を使っており、日本では天草石を使っている。

◎カオリンとは何ですか?

中国の景徳鎮のそばに高嶺(カオリン)山という山があって、ここは 長石の結晶体からできたいい陶土ばかりの山なので、土そ のものを世界的にカオリンと呼ぶようになった。純粋なカ オリンはまっ白なんだ。ところがカオリンは鉄が好きで、 遠くにある鉄分でも吸収してしまう。だから、中国の高嶺 山のように一山すべて鉄分がなくてカオリンだけでまっ白 という山は他にはないね。

景徳鎮

◎天草石とはどういうものですか?

九州の天草島あたりでとれるので天草石と呼ぶ。カオリ ンは風化度が進んでいるので、土粘土みたいだが、天草石 はまだ堅くて、石のかっこうをしている。これを粉砕して 使う。九州はこの天草石のおかげで、磁器を作って長い問 もうけてきた。九州で磁器が発達したのは、台湾経由で渡 ってきた中国の職人が教えたのと、天草石があったからだ。 九州は、陶器は朝鮮から、磁器は中国から教わったんだ。 伊万里焼というが、あれはあの地方の磁器を伊万里港か ら出荷したからそういう名がついたんだ。

天草諸島

◎磁器のことを別名チャイナ・ウエアというのはなぜです か?

磁器が最も早くから発達したのは中国だからね。特に高 嶺山のある景徳鎮が主体となっている。磁器は、中央アジ アから西では全然焼いていなくて、ヨーロッパには、シル ク・ロードを通って伝わった。シルク・ロードは、磁器の 道でもあるんだよ。ヨーロッパ人にとっては中国の磁器が 不思議でしょうがなかった。ヨーロッパの古い辞書をひく と変なことが書いてある。「磁器とは、貝殻を割って卵の白 身でかため、三百年くらい地中に埋めておくとできるもの だ」というんだ。

柿右衛門

磁器の製法を知ったのはずい分後のことで、インドを通 じて東アジアとの貿易が開けてからだろう。日本は景徳鎮 から流れてきた職人を使って短い内に磁器を知ったが、ヨ ーロッパでは製陶所に行くと必ずといってよいほど柿右衛門 が飾ってあって、そしてうちの製陶所は柿右衛門を研究して百五十年になると……。今ようやくここまできたが、 もう百五十年もすれば立派に柿右衛間がやれるようになる とそういうんだ。それだけ磁器を、ヨーロッパではやかま しくいっておる。ドイツあたりでは磁器のカケラを拾うと 幸福がやってくるなどといって、何故か魔的な力が磁器に あるように思っているらしい。

出典:唐九郎著『唐九郎のやきもの教室』(新潮社)

次回は「土のこと」 お楽しみに